晩夏の岩籠山へ  【舞鶴山遊会】

 9月に入り久しぶりに例会を再開。今回、目指したのは敦賀三山の一つ、岩籠山です。当日は9月中旬とはいえ強い日差しが照り付け、蒸し暑い一日となりました。
 そのような気象条件やかなりの急登、長時間の歩行等が重なり、リタイアを余儀なくされたメンバーや体調不良のメンバーも出るなど、今後に課題を残す山行になりました。それでも、緑光あふれるブナ林に心和み、インディアン平原の奇岩が織り成す自然の造形美に心躍る山旅になりました。

インディアン平原の眺望
今回の登山ルート

登山口 ~ 奥野山 ~ 大岩を経て稜線へ

 昨年、秋に市橋コースが企画されたのに続き、今回は駄口登山口からのコースです。登山口発が10:00ということもあり、「ほんとに9月か」と悲鳴に似た声も聞こえてくるほどの暑さ、そして登り始めていきなりの急登で汗が吹き出ました💦
 その後、奥野山、大岩と登り続け、標高500m付近で南側に大きく開けた気持ちの良い稜線に出て、ここからははるかに滋賀、高島トレイル方面を遠望することができました。

美しいブナの森に魅せられて

 標高650~700mのなだらかな起伏の斜面に見事なブナの森が広がっています。これまでにも、ブナ林として、西日本最大級の「大山」や北近畿随一といわれる丹後「髙山」などなどを見てきましたが、今回が最も印象に残りました。
 それは多分、緩やかな斜面の広がりの中で視界が開け、青い空、灰白色の木肌、緑の葉、茶褐色の道、そしてそれらが降り注ぐ陽光によって溶け合い、絶妙な色調を醸し出しているからなのだろうと感じました。

 新鮮ですがすがしい森の中を歩きながら、春、若葉の季節の清冽さ、緑あふれる夏、様々な色を纏い、目にも鮮やかな秋の紅葉、そして全てを覆い尽くす白銀の世界、そんな四季それぞれのブナの森の美しさをじっくりと感じてみたいと思いました。

ブナは「森の土の母」

 ドイツではブナを「森の土の母」と呼び、人々から愛されているそうです。落葉広葉樹であるブナは秋から冬にかけて大量の落葉・落枝の層を生み出します。”森の下にはもう一つの森がある”と言われるほど、落葉の層の中には多くの生物がいて、それぞれの役割をになっています。 
 その堆積の中で肥沃で養分あふれる土になり、様々な植物、動物、微生物、菌糸類などをはぐくみ育てる自然環境と物質循環がつくりだされます。 

 ブナの森は自然林で様々な年齢の木があって、自然環境の中で世代交代を繰り返す健康な森でもあります。

伯耆大山、ブナの紅葉(2021年10月)
ブナの森は緑のダム

 昔からブナの森は”緑のダム”といわれています。落葉で厚く積重なった地面は雨水をぐんぐん吸収していきます。
 
 土の中には、土壌生物やブナの根が作り出す隙間がたくさんあり、それが貯水タンクとなって雨水を受けとめています。

 こうして、いったん地中に蓄えられた水は徐々に低い方に流れ、森のあちこちでミネラルを豊富に含んだ清水となって湧きだし、さらに下って耕作地では豊かな恵みをもたらします。

高山の大ブナの木(2018年10月)

インディアン平原 ~ 籠山山頂

 山頂の東側にはクマザサに覆われたインディアン平原と呼ばれる草原が広がっています。そして奇形な花崗岩の巨石が点在し、この草原のシンボルとなっています。確かにハリウッド映画のワンシーンに出てきそうです。
 このインディアン平原からは、北側の敦賀市街、南方向には琵琶湖や余呉湖、伊吹山をはじめとする滋賀の山々と360度の眺望を楽しむことができました。

 見上げれば夏の雲がまだまだ元気に湧き上がっていましたが、足元にはススキの穂がなびき、時折吹き渡る風に暑い日差しの中にもそこはかと秋の訪れを感じました。

仲間と供に ・ ・ ・ 

 今回の山行は暑さのためもあり、歩き通すことが厳しかったメンバーが出てしまったことも事実です。個人、個人が体力や対応能力を身に付けることは大前提として、企画設定やグループとしての対処能力などを問い直す契機にもなりました。
 それと同時に仲間たちの励ましや手助けやフォローを体感することで、会全体が持っている雰囲気、仲間どうしのつながりや絆、優しさなどもより強く感じる機会になったように思います。